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表明保証保険とは?東南アジアM&Aにおける表明保証保険の活用方法について徹底解説!

表明保証保険は欧州や欧米のM&A案件で良く利用される一方、
「東南アジアM&Aには必要ない」、「東南アジアM&Aは金額も大きくないし保険を使うほどではない」等の保険不要論を多く耳にする

果たして本当にそうだろうか。
実は、東南アジアM&Aにこそ、表明保証保険は必要なのである。

理由は、メリット・デメリットを正確に理解し、適切に使うことができれば、
表明保証保険は、売り手との交渉において有効な武器になるからだ。

この記事は、下記の疑問を抱えるM&A実務担当者に向けて執筆している。

・表明保証保険ってなに?
・メリットやデメリットが知りたい
・表明保証保険を利用する際の留意点は?
・表明保証保険のコストは?
・プロセスは?

ぜひ、表明保証保険に関する嘘の噂を鵜呑みにすることなく、しっかりと自分の頭で考え、表明保証保険の要否につき判断できるようになっていただきたい。

表明保証保険(Representations & Warranties Insurance )とは?

表明保証保険(Representations & Warranties Insurance )とは?

表明保証保険とは、
売り手のウソ(表明保証違反)によって損害が発生した場合、
保険会社がその補償金額を支払ってくれる保険のことです。

種類としては、買い手が購入するものと、売り手が購入するものがありますが、
売り手が保険を購入するケースは稀です。

そもそもなぜ表明保証保険が必要なのでしょうか。
売り手の違反なんだから、売り手に補償させればよいのでは?
買い手がわざわざ買うメリットあるのでしょうか。

表明保証保険のメリットについて次章で解説します。

表明保証保険を購入するメリット

表明保証保険を購入するメリット

売り手及び買い手にとっての表明保証保険のメリットは下記の通りです。

  1. クリーンエグジット(売り手のメリット)
  2. 売り手の補償履行を担保・信用力を補完(買い手のメリット)
  3. 売り手(対象会社)との関係悪化を回避(買い手のメリット)
  4. 売り手と買い手で見方の異なるイシューに対する解決策となる(双方のメリット)

① クリーンエグジット(売り手のメリット)

クリーンエグジットというのは、「後腐れのない売却」です。
特にプライベートエクイティファンド(PEファンド)等はクリーンエグジットを好みます。

理由としては、
彼らは得た売却対価を投資家へ分配する必要があるため、
案件が終わって3年たったころに買い手から、「表明保証違反があった!損害賠償払え!」といわれてても、

もう投資家へ分配してしまっているし、
ファンド自体も解散してなくなっている可能性もあるからです。

このため、PEファンドの入札案件では、
表明保証保険の購入が、入札(オークション)参加の条件になることも多くあります。
(入札案件では、売り手にて初期アレンジはするが、買い手が購入者になるSell Buy Flip型が多い)

以上より、仮に表明保証保険が見つかった場合でも、補償請求については、
売り手は一切関与することなく、保険会社と買い手で進めることになるため、
売り手にとっては「後腐れのない売却」が実現できます。

② 売り手の補償履行を担保・信用力を補完(買い手のメリット)

売り手が大企業の場合や、資金力に余裕のある売り手の場合であれば問題ないですが、
東南アジアではオーナー企業が多く、株式譲渡契約でしっかりと補償条項(インデム)を
規定したとしても、売り手に支払い能力がなければ表明保証違反に基づく補償請求をしたところで、全く意味がありません。

また、東南アジアでは特に、違反が立証された場合であっても、
売り手オーナーの支払いたくないという思いから、可能な限り支払いを引き延ばそうとする傾向があります。

表明保証保険を購入することで、売り手の信用力や手持ち資金に関わらず、
違反を立証できるものについては、保険会社から補償相当額の保険金を支払ってもらえます。

③ 売り手(対象会社)との関係悪化を回避(買い手のメリット)

日本企業による東南アジア案件では、
外資規制やキーマンのリテンション、実務上の理由から、
買収後もオーナーが一部の株式を保有し、ジョイントベンチャーのパートナーとして事業に関与するケースが多くあります。

この場合の問題点は、
仮に表明保証違反を発見した場合、補償請求を行うのは、元売り手である現在のパートナーであるという点です。

当然、相手に「嘘ついてただろ!」と表明保証違反の事実を突きつけ、
お金のやり取りが発生することになるため、関係悪化は避けられないでしょう。

最悪の場合、想定していたシナジーを全く得らないままパートナーとの提携解消となり、
M&Aの目的を果たせなかったという事態となります。
こうなってしまっては元も子もないですよね。

表明保証保険を購入することで、
仮に表明保証違反に基づく補償請求を行うことになった場合でも、

やり取りには売り手は全く関与せず、全て買い手と保険会社で行い、
売り手の懐は全く痛まないため、パートナーとの関係を悪化させず、
保険会社に対する保険金請求のみで損害の回復が可能となります。

④売り手と買い手で見方の異なるイシューに対する解決策となる

例えば、係争金額は大きいが、負ける可能性が著しく小さい訴訟が対象会社に存在する場合を考えてみましょう。

売り手としては、発生可能性を考えるとリスクは小さいとみなす一方、
買い手としては、最大額を契約でリスクヘッジしないといけないというケースです。

このように買い手と売り手で同じイシューに対しても、互いの事情で見方が異なり、
かつ、このイシューがディールブレイク要因になる場合には、表明保証保険が有効です。

表明保証保険を検討する際の留意点

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表明保証保険に入るメリットについてお分かりいただけましたでしょうか。

メリットを聞くと「入らない理由がないんじゃないの?」と思うかもしれませんが、
表明保証保険は万能ではありません

下記に必ず理解しておくべきポイントを纏めました。

  1. 買い手が認識していない未知のリスクのみカバー
  2. 契約上表明されない保証内容はカバーされない
  3. 買い手DD/Disclosureを完全に代替するものではない
  4. 表明保証内容の全てを無条件でカバーするわけではない
  5. あくまでもバックアッププランの一つと捉えるべき

① 買い手が認識していない未知のリスクのみカバー

買い手がデュー・ディリジェンス(DD)やディスクロージャーレター等で判明しているものについては、カバーの対象外となり、未知のリスクのみが対象となります。

保険ではカバーされない既知のリスクの一例を示します。

  • DDレポートに記載されるリスク
  • DDで売り手とやり取りするQ&Aに記載される事項
  • 株式譲渡契約書(Share purchase Agreement:SPA)交渉中に発覚するリスク
  • データルーム(Virtual Data Room: VDR)上のファイルに含まれる情報・データ
  • Disclosure Schedule / Disclosure Letterに記載される事項

② 契約上表明されない保証内容はカバーされない

表明保証の項目は株式譲渡契約書(SPA)の交渉を経て決定しますが、表明保証保険はSPAに記載されている項目の範囲しかカバーしません。

ちなみに、表明保証違反の約70%
財務諸表、租税、法令順守、重要な契約、労働・雇用に関する事項に起因するようです。

SPA上で記載されることの多い、表明保証の項目の一例を示します。

登記・株式 法令等に基づき設立・登記された法人で、それに基づき株式を発行し、役員等を選定し、問題なく運営されている旨
財務 BS(貸借対照表)・PL(損益計算書)上、追加の債務は存在しない旨
税務 未払の租税はなく、申告書等は適切に提出している
許認可 事業運営、買収・合併等の際に必要となるライセンス、許認可を有していること、当局よりクリアランス、承認等を得ている旨
訴訟 過去、現在、訴えられたり、訴えたりしたことはない旨
検査・調査 過去そして現在、検査に合格し、調査の対象となったことはない旨
知財 対象会社に帰属する知的財産権は他社の権利を侵害していない旨
環境 対象会社が工場等を所有する場合、環境汚染が発生していない旨
年金 対象会社の雇用者の年金・退職金等の積立不足がない旨

③ DDを完全に代替するものではない

表明保証保険を購入するからといって、DD等の通常のディールプロセスをやらなくても良いわけではなく、DDが不十分な項目については表明保証保険の対象から除外される可能性があります。

④ 表明保証内容の全てを無条件でカバーするわけではない

DDの程度に関わらず、表明保証保険の対象から除外される事項もあり、
下記に除外される典型的な項目を記載しております。

  • 賄賂関係
  • 環境関連
  • 将来予測
  • 製造物責任
  • マネーロンダリング
  • 移転価格税制 等

以上のように、買い手が懸念する項目は保険会社も懸念する可能性が高く、
保険会社から追加資料を求められたり、条件付きカバーとなったり、保険のカバー範囲から除外されたりするケースもあります。

⑤あくまでもバックアッププランの一つと捉えるべき

多額の訴訟、環境債務、税務問題等のM&A案件を進める上で重要な論点については、
保険によって解決することを前提にしてしまうと、

保険が利用できなくなった、あるいは保険でカバーされなくなった場合、
ディールブレイクとなってしまう可能性があります。

そのため、常に別の対応策を協議しておき、保険はあくまでもバックアッププランとして考えておくべきです。

表明保証保険の保険料(東南アジア)

表明保証保険の保険料(東南アジア)

アジア地域における表明保証保険の保険料は、下記の通りです。

保険料 = 支払限度額 × 2%程度(東南アジアの相場)
※語呂合わせ:しわ(支払)には(2%)表明保証保険

支払限度額とは、受取可能な保険金のMaxで、案件のサイズによって変化します。

東南アジアで多い買収価格US$10~50Mの場合、
買収価格の75%~100%程度が支払い限度額となります。

【計算例】
買収価格がUS$20Mの場合、US$15M~20Mが支払限度額となるため、
その2%が保険料の目安となる

表明保証保険契約までの一般的な流れ(想定スケジュール)

表明保証保険検討・導入のプロセス

保険手続きとしては、全体で2~3ヵ月かかることが一般的です。
以下に、保険発効までのプロセスの詳細を記載しております。

初期的検討

通常、DD開始前後ごろに保険ブローカーへ問い合わせを行います。

表明保証保険の購入は、保険ブローカーを通じて行うことが一般的であり、
保険ブローカーが複数の保険会社とコンタクトを取り見積を取得します。
(※保険仲介手数料は保険料の内数となっているため、別途コストは発生しない)

保険会社による引受可否を判定するため、保険ブローカーを介し、
対象会社の①業種、②買収価格、③所在地等の情報を保険会社へ伝える必要があります。

保険ブローカーの選定ポイントは下記の通りです。

  • 対応スピード
  • アクセスできる保険会社のバリエーション
  • 日本企業に対する理解度
  • 保険会社との交渉におけるサポート力はあるか

見積資料準備

保険会社とNDA(秘密保持契約)を締結後、以下の資料を保険会社へ開示します。

  1. インフォメーションメモランダム(IM)
  2. 株式譲渡契約書(SPA)のドラフト
  3. 対象会社の財務諸表(監査済)

概算見積(NBI)取得

複数の保険会社から概算見積を取得し、正式見積取得に向け、支払限度額等を踏まえ、
保険会社の選定を行います。

アンダーライティング

保険会社選定後、下記の情報を開示し、正式見積を取得します。

  1. DDレポート(DD専門家へHHL差入後に開示)
  2. VDRアクセス件付与
  3. SPA / Disclosure Letter

保険会社へDDレポートを開示するにあたっては、
ホールドハームレスレター(HHL)をDDレポートを作成した専門家へ差し入れる必要があります。

これは、保険の審査のためにDDレポートを使うけど、
「DDレポートの内容に誤りがあっても、責任を追及せず、さらに第三者からの行為・請求等から損害を受けないよう守る」という誓約書です。

DD専門家としては、DDレポートはクライアント、つまり買い手に提出したものであり、
他社へ開示することを想定して作成していないため、HHDを買い手から各専門家へ差し入れるプロセスが必ず必要となります。

この過程を経て、保険会社と引受審査費用に関する契約を締結し、引受審査が開始されます。

この引受審査で面倒なのが、保険会社との質問のやり取り(質問状:Underwriting Questions)やアンダーライティングコール(保険会社との電話会議)です。

しかも、引受審査以降のプロセスは全て英語でのやりとりです。

対象会社のDDの後、保険会社と第二のDDを行うようなものなので、
買い手にとって、このアンダーーライティングプロセスの負担は大きいです。

保険の交渉

SPAの交渉と並行する形で保険の交渉が開始し、
SPAドラフトの修正を適宜、保険契約にも反映し、付保範囲や免責事項等の保険条件を
保険ブローカーを介し保険会社と交渉します。

保険発効

通常、SPA締結日と同日となります。

東南アジアM&A案件をお探しの方へ

クロスボーダーM&Aプラットフォーム「ドマンダ」では、様々な東南アジア案件をご紹介させて頂いております。

国内のM&A・事業承継案件とは異なり
東南アジアの優良案件情報は、限られたコミュニティの中でのみやり取りされることが多く、独自のネットワーク(人脈)があって初めて入手可能な情報となります。

また、先進国でのM&Aのように、プロセスが機械的に進むケースは稀であり、先方と密なコミュニケーションを取りながら、情報開示やインタビュー設定等のリクエストを実施することで、先方の売却準備を促すことも重要なプロセスとなります。

以上より、東南アジアのクロスボーダー案件に精通した現地のM&Aアドバイザーとの接点を持つことが重要であると考えております。

24時間いつでも案件のご相談をお受けしておりますので、
クロスボーダー東南アジアM&Aをお考えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 



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