この記事を読み終えると・・・
●LBOモデルをわずか30分で0から作れるようになる
●LBOの基本を体に覚えさせることができる
想定読者
●LBOモデル作成の良い書籍やサイトが見つからなくて悩んでいる人
●複雑なLBOモデルではなく、まずは基本を学びたい人
●PEファンドに転職したい人
LBOモデルは複雑にしようとすると、いくらでも複雑にできる。
そのため、いきなりそのモデルから学習をスタートさせてしまうと、途中で投げ出してしまうことになりかねない。
また、LBOモデルを解説した初心者に優しい日本語のものは私がリサーチした限り見つからない。
そこで、この記事では「誰でもLBOモデル(基本)を作れる方法」を解説する。
LBOとは何か?については、下記の記事で詳しく解説しているので、
こちらを読んでからモデル作成に取り組んでほしい。
LBO(レバレッジド・バイアウト)とは?シンガポールM&A専門家が図解!

【LBOモデル応用への橋渡し】余剰キャッシュ・フロー・スイープの基本の基本の基本~なぜExcelが循環するのかを徹底解説~
PL/BS/CFの準備
対象会社の3表(PL/BS/CF)がないと話が進まないので、適当に作ってみる。
財務モデルを作るときの数字の色は、下記が基本
・ベタ打ち:青色
・シート内参照:黒色
・別シート参照:緑色
3表が絡むモデルを作成する際のコツは、「BSを埋めること」を意識すると良い。
・現預金を埋めるには?
・売掛金を埋めるには?
・シニアローンを埋めるには?
こう考えていくと、勝手にするべきことが見えてくる。
現預金を埋めるには?→キャッシュフロー計算書が必要
売掛金を埋めるには?→運転資本が必要
シニアローンを埋めるには?→借入スケジュールが必要
次って何をすればよかったんだっけ?と迷ったら、
BSを埋めることを意識してほしい。
損益計算書(PL)

貸借対照表(BS)
理由は後で説明するが、2021/3月期のみ右によけておく。

キャッシュフロー計算書
2021/3月期の期末現預金は、BSを参照する。

買収金額計算
まず企業価値を求める。
EBITDAは対象会社のものを使用し、EBITDAマルチプルを適当に入力する。
今回は7倍にした。
企業価値 = EBITDA × EBITDAマルチプル
次に株式価値を求める。
株式価値 = 企業価値 + 現預金 - 有利子負債

これで買収する企業の価格は決まったので、次はのれんを計算する。
のれん計算
のれんは下記の算出式で求める。
のれん = 株式価値 - 純資産

このモデルではIFRSを採用しているためのれんは償却しないが、
日本の会計基準を採用する場合は、のれんを20年以下で償却する形にする。
手数料の計算
LBOには主に2種類の費用が発生する。
①アドバイザリー費用
・LBOを行うにあたり、投資銀行や弁護士に支払うアドバイザリーフィー
・金額は株式価値の3%程度だが、今回は簡略化のため1,000とする。
・一括で支払う
②負債発行費用
・LBOにて借入金を銀行等から調達する際にかかる費用のこと
・金額は借入総額の2%程度だが、今回は簡略化のため1,000とする。
・5年間の定額償却(一旦、負債発行費用は資産化されBSにのるので、「償却」という言葉が使われているが、要は分割払いのイメージ)
負債を発行するための費用だが、借り入れた時点だけでなく、
借入期間すべてにおいて効果が及ぶと考え、借入期間と合わせて償却する。

借入の前提条件
どんなタイプの借入で、どれだけ借りるのかを決める。
今回はシニアローンと劣後ローンで調達することにする。
どれだけ借りるかは、「EBITDAの何倍」で表現されることが多いので、
今回は下記の通りとする。

資金使途・資金調達

上で求めた買収代金(113,872)に加え、手数料や既存の借入を返したりするお金が必要になる。
資金使途は値を引っ張ってくるだけで良い。
当然だが、資金使途の合計(120,872)と資金調達(120,872)の合計は一致させる。
資金調達については、
シニアローンと劣後ローンは借入額が上でやった通り、
決まっているので、合計からシニアローンと劣後ローンの合計額を引くことで、
普通株式による調達額を求める。
実務においては、普通株式とシニアローンで調達できない不足部分を劣後ローンで調達する場合が多い。
この時点のExcelシート(参考)

BSのプロフォーマを埋めていく
2021/03は実績が入っているが、LBOを実施することで、BSが変わる。
2021年4月1日にLBOを実施するとして、2022/03期の期首BSを作成する。

①SPAによる普通株式による調達
上記の通り、普通株式を買うために「60,327」調達するので、
60,327だけ現預金が増え、60,327だけ資本金が増える。
②SPAによる銀行借入による調達
次は借入を反映する。
上で設定した通り、シニアローンと劣後ローンを調達したので、
負債が増え、その分だけ現預金が増える。
③SPAによる対象会社の株式買収
お金は調達したので、対象会社株式を買収する。
キャッシュが減り、子会社株式を購入する形となる。
④SPAと対象会社の合併
投資と資本の相殺消去を行う。
つまり、SPAの持つ子会社株式、対象会社の純資産を相殺し、
その差額がのれんとなる。
⑤既存借入の返済
既存の借入金を返済して、キャッシュが減る
⑥アドバイザリー費用の支払い(費用)
アドバイザリー費用はPL項目なので、
キャッシュが減って、利益剰余金が減る。
⑦負債発行費用(資産)
負債発行費用は、負債を発行するためにかかる費用なので、
借りている間はその効果が及ぶと考え、繰延資産として処理する。
つまり、借入期間の間(5年間)で均等に分けて支払う。
下記のBSを見ると、負債発行費用が1,000から200ずつ減っているのがわかるだろう。
これは、200ずつ負債発行費用を払っているということを意味する。
繰延資産がいまいちわからない方は、
簿記3級で出てくる株式会社を設立したときの「創立費」を思い出してほしい。

借入スケジュール

シニアローンは毎年返済していき、5年で返済することにし、支払利息は12%
一方、劣後ローンは2025/3月期に一括返済することにするので、上記では返済は現れない。利息は8%とする。
設備投資スケジュール

設備投資額(青字2,500)は適当に入れてみた。売上高の何%などで設定する場合もあるが、今回はベタ打ちで入力。
減価償却費については、既存も新規も償却年数を7年にした。
下記の記載方法はモデルで良く使うので、オススメ。

損益計算書

そもそもここが本質ではないので、本当にシンプルなPLにした。
運転資本

運転資本は、売掛、在庫、運転資本で構成されているとした。
2022年3月期以降は、2021年3月期の回転期間を横置きにしている。(青字の部分)
キャッシュフロー計算書

コミットメントラインは緊急用ローンなので0。
また、このモデルにはキャッシュスイープ(強制的に期限前弁済させる)は適用していない。本格的なモデルであれば、「あ!そんなにお金稼いだの?じゃあ早めにお金返してー」ということで、強制的に借入を返済させる仕組みを適用することが多い。
その際は、長期の返済から減らしていく形を貸し手から求められることが多い。
理由は、目先の計画は見えていて返してもらえる可能性が高いが、
将来の話になればなるほど、返済してもらえるかは怪しくなるからだ。
お金を貸している側からしたら、「返済してもらえる可能性が低いものから返済してもらう」というのは納得できる。
用語の詳細はこちらから
LBO(レバレッジド・バイアウト)とは?シンガポールM&A専門家が図解!
EXIT分析
IRRとは内部収益率といい、どれだけ儲かる投資なのかということを表す。
簡単にいうと、将来得られるキャッシュフロー(今回は179,879だが)を、ある割引率で割り引くことで、現在価値を出す。
一方、投資した金額は-で表現されているように、113,872だ。これらを足して0になるような割引率を求めている。
つまり、▲113,872+179,879×(1/1+9.6%) = 0ということだ。
これは、113,872を今回の投資に回すことで、179,879、つまり、9.6%増えるということを意味する

現在のモデルの設定は、EBITDAマルチプル7倍(Entry Multiple)で買収し、8倍(Exit Multiple)で売却するという前提だ。(IRR=9.6%)
当たりまえだが、何倍で買って何倍で売るのかによって投資効率、すなわちIRRが変わってくる。それを表したのが、上記の同心円状の模様になっている感応度分析結果だ。
なお、株主構成は最初はファンドが100%だが、対象会社を経営していく中で、
経営者のモチベーションを高めるため、経営者に株式を10%与える場合を想定している。
投資効率を示すIRRは下記の関数を用いて算出する。

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