M&Aマニュアル

シンガポールM&Aを成功に導くDD(デューデリ)のポイント①

シンガポールM&Aを行うに当たって、対象会社の内部まで入り込んで正確な情報を収集し、
可能な限りリスクを把握するためのチェックは欠かせません。

また、M&A担当部署の役員にとっては、
買収する前にしっかり会社について調べるというのは当然の義務です。

私たちの私生活においても、買おうとしているものが何か分からない状態で
買うなんてことはありません。(福袋は例外です)

ましてや、M&Aは「会社」を買うのです。
買う前にどういう会社かろくに調べずもせず買って、
買ってから「こんなはずじゃなかった」では済まされません。

特に、シンガポールM&Aの場合は、
英語という言語の違いに加え、法制度や商習慣など、日本国内とは異なることが多いので、
国内案件よりも、しっかりと情報を集め、専門家のサポートも十分に活用しながら、
慎重に会社を調査していく必要があります。

このように、会社をM&Aする前に、そのターゲットとなる会社の情報を集め、
隠された問題点はないかを調査していくことを、デュー・デリジェンス(Due Diligence:DD)といいます。

実務では、略して「デューデリ」とか「ディーディー」などと呼ばれます。

買い手にとっては、会社を買う前に、対象会社の中身まで見ることのできる絶好の機会
であり、プロセスの中では唯一の機会といってもいいでしょう。

かといって、あらゆる情報をかき集めて隅から隅までチェックするのは、
時間的にもコスト的にも現実的ではないです。

つまり、事前に抑えるべきポイントを頭に叩き込んでおく必要があるのです。

この記事では、DDの種類は何があるのか、リスクとは具体的にどのようなものがあるのか、DDを効率的に行うためにどんな点に気を付けるべきなのかなどについて、
シンガポールM&Aの実務で得たノウハウも交えながら解説していきます。

そもそもデューデリジェンス(DD)とは?

デューデリジェンスとは、

・対象会社の情報収集
・買収後、買い手に影響を与えそうなリスクの洗い出し
・M&Aプロセスを進める上で必要となる手続きの確認

を行うことです。

デューデリジェンスとは、「Due Diligence」=「行わなければならない努力」という字義的な意味があるように、M&Aを行う上で絶対に欠かすことのできないプロセスです。

しっかりと対象会社の情報を集めることで、
いくらで買えばよいか判断したり、買った後のシナジーを検討したり、

買った後に、

税務署から過去の税金払えといわれたり、

訴訟の賠償金支払わないといけなかったり、

買収前に販売していた製品の保証義務を負わされたり、

事業を行う際に必要なライセンスを買収後に買い手がちゃんと引き継げなかったり、

などなどがないかを確認します。

これらを調べないで会社を買うなんてありえないですし、
シンガポールM&AなどのクロスボーダーM&Aの場合は、なおさら必要です。

いくつかの分野に分かれるデューデリジェンス(DD)

デューデリジェンスは、調べる分野によっていくつかに分かれています。

種類 概要 主な担当者
ビジネスDD 製品・サービス及び市場に関する調査 ・買い手担当者(事業部)
・戦略コンサル
財務・税務DD 財務状況、損益状況の実態調査、税務リスクの調査 ・買い手担当者(経理財務)
・会計事務所
法務DD 対外的な契約関係、係争事件等の調査 ・買い手担当者(法務)
・弁護士事務所
環境DD 保有不動産における環境汚染有無等に関する調査 ・環境エンジニアリング会社
人事DD 組織風土、人事制度等の人材マネジメントに関する調査 ・買い手担当者
・人事コンサル

これらのDDを買い手の社内リソースだけで対応することは不可能です。

なので、それぞれの分野に精通した専門家のサポートを受けながら、
正確な情報の把握及びリスクの洗い出しを行い、M&Aプロセスを進めていきます。

対象会社の業種や案件のスキームなどによりますが、
基本的には、①ビジネス、②財務・税務、③法務の3つで事足りることが多いです。

環境DDは、対象会社が製造メーカーで工場や土地を保有している場合等に実施します。

人事DDは、以前、対象会社のエンジニアを買収することが目的で、「どうしてもキーパーソンとなるエンジニアには辞めてもらうと困る!」という案件を担当した際、

対象会社のキーパーソン(エンジニア)の特定、彼らへのリテンションプラン策定等で
実施した経験がありますが、実際に人事DDを行うケースは少ないです。

デューデリジェンス(DD)はどこにお願いすればよいの?

個人的な経験からすると、各DDには下記の専門家を使うことが多くありましたので、
例として紹介します。

種類 代表的な専門家
ビジネスDD マッキンゼー、ADL、ベイン、BCG、ベイカレント、山田ビジネス等
財務・税務DD KPMG、デロイト、EY、PwC
法務DD 森濱、西村あさひ、アンダーソン毛利、TMI、長嶋・大野、
ベーカーアンドマッケンジー、クリフォードチャンス、MOFO、A&O等
環境DD ERM、AECOM等
人事DD マーサー等

既に社内で弁護士は「森濱」しか使わない!と最初から決めている企業もありますが、

一般的な流れとしては、基本的には複数の専門家から相みつ(見積り)を取り、
業務スコープや価格を比較した上で決定します。

どうしても価格に目が行きがちですが、
業務スコープに、デューデリジェンス報告レポートの日本語サマリー作成や、契約交渉、
LOI(意向表明書)レビュー等が含まれていない、つまり、別料金の場合もあるため、

業務スコープに何が含まれているか、

財務・税務であれば、対象会計期間は2年なのか3年なのか等も、事前に確認する必要があります。

アドバイザーの活用方法

シンガポールM&Aにおいては、
上で紹介したようなグローバルネットワークを持った専門家に依頼するのが一般的ですが、
具体的な依頼方法としては、大きく3パターンあります。

  1. 日本事務所が窓口+現地海外事務所が実務(DD担当)
    • コミュニケーションは全て日本語
    • 日本事務所から海外事務所へ指示を出すなど内部での情報伝達は適宜行ってくれる
    • 一貫したサービスが受けられる
  2. 現地海外事務所が窓口+実務+日本事務所が適宜サポート(サマリーのみ等)
    • 基本的には全て海外事務所が担当
    • 海外事務所からの指示で、DD報告書のサマリーの和訳や複雑な部分のみ日本語で説明する等、ピンポイントで日本事務所がサポートする
    • 日本企業とのやり取りに慣れていない場合もある
    • 日本事務所は案件には基本関与せずスポット対応
  3. 現地海外事務所が窓口+実務
    • 全て海外事務所が担当
    • 買い手の現地法人がM&Aを全て責任をもって対応する場合などは、下手に日本側を巻き込まずに済むので効率的

シンガポールM&Aの場合、専門家を最大限活用し、
ミスコミュニケーションのないよう進めていかなければなりません。

DDは国内案件でもなかなか骨の折れるプロセスです。
その交渉相手・調査対象が海外企業となるとなおさらでしょう。

そのため、多少費用がかかったとしても、
窓口は全て日本側で日本語で対応してもらい
買い手の要望もしっかりと現地海外事務所へ伝えてもらえる①が最も望ましいでしょう。

デューデリジェンスの方法

デューデリジェンスの方法としては、大きく5つあります。

①データルームで開示された資料の閲覧
⇒ バーチャル・データ・ルーム(VDR)を使用することが多い

②Q&Aリストを用いた質問のやり取り
⇒ Excelファイルに買い手側で質問を記入し、それに対し、売り手が直接記入し回答するという流れ

③マネジメントインタビュー
⇒ マネジメント同士で行うトップ面談や、ビジネスDDでのインタビューを指します

④実務者インタビュー
⇒ 財務・税務DD、法務DDでは特に重要で、対象会社の経理や法務担当者へ実施します

⑤サイトビジット
⇒ 対象会社のオフィスや所有する工場、顧客先などを直接訪問します

シンガポールM&Aの場合、
基本合意書締結前にも、対象会社事業やオーナーの人柄を確認するため、
③や⑤を実施するケースが多いです。

デューデリジェンスの目的とは?

デューディリジェンスの目的は、

① 買収価格は適切なのか
② 買った後は大丈夫なのか
③ 実際に買収できるのか

を確認するためです。

そのためには、まず対象会社の情報を正確に、かつ様々な角度から収集することが欠かせません。

顧客、経営陣、従業員、事業、財務、税務、法務、情報システム、製品・サービス、技術、環境、市場、法規制、政治など、さまざまな角度から対象会社を調査することで得られた情報を元に、①~③のポイントについて検討していくことになります。

見つかったディールイシューに対する対応策

DDで何のためにリスク(ディールイシュー)を見つけるのでしょうか。

それは勿論、対応策を検討するためです。

DDで問題がみつかったけどどうしたらいいのか悩んでいる方も多いと思いますが、
対策方法としては、3つのパターンがあります。

①価格に反映する
②契約で保護する
③交渉材料にする

次回は、上記の対策方法について詳しく解説します。

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