シンガポールで建設業界のM&Aを行うと、必ず話に出てくるのがこの「MYE」です。
MYEは、Man-year entitlementの略で、以前紹介したQuota(クオータ)と関連がありますので、クオータを知らないという方は、まず下記の記事を読まれることをおすすめします。
シンガポールM&Aでは避けては通れないQuota(クオータ)とは?
MYE(Man-year entitlement)とは?
簡単にいうと、
建設業界のメインコン(メインコントラクター:元請業者)の外国人労働者採用枠です。
シンガポールの労働省であるMOM曰く、
MYEの対象となるメインコンの定義については、下記の2つです。
【メインコンの定義】
①建設(Construction)
ビル・オフィスなどの建設や、道路や橋などのシビルエンジニアリングも含みます
②プロセス(Process)
石油、石油化学、特殊化学品、医薬品の製造工場の建設のことです
つまり、オフィスビルやショッピングモール、地下鉄、マンション、製造工場などの建設を
政府や企業から、直接または入札を通して受注する企業のことです。
外国人の採用枠ってことは、クオータと同じじゃん!と思われる方もいるかと思いますが、
クオーター採用枠+αとなる採用枠なんです。
つまり、このMYEのおかげで外国人の採用枠が増加し、
「クオータ採用枠+MYE採用枠」となり、多くの外国人労働者を雇えるようになります。
また、このMYEにはとてもユニークな特徴がありますが、それは後ほどご説明します。
MYEの対象となる外国人国籍は?
シンガポールの労働省であるMOMによると、
MYEと対象となる外国人国籍は、non-traditional source (NTS) countriesとthe People’s Republic of China (PRC)となっており、詳細は下記の通りです。
【PRC】
・中華人民共和国
【NTS】
・インド
・タイ
・スリランカ
・バングラデシュ
・ミャンマー
・フィリピン
MYEの外国人採用枠はどのように決まるの?
クオータは、外国人を採用する企業の属している業界や既に採用しているシンガポール人の数で決まりましたが、
MYEは、メインコンが受注したプロジェクトの規模(受注金額)で決まります。
単位は「man-year」で表され、作業量(人数×作業時間)を意味します。
例えば、2 man-yearであれば、「作業量=人数×作業時間」が2であれば良いので、
2人の外国人労働者を1年間働かせる、もしくは、1人の外国人労働者を2年間働かせるなどが可能となります。
ただ、先程説明したとおり、メインコンといっても何を建設するかでタイプがあり、
MYEもそのタイプによって異なっています。
具体的には下記の通りです。
Construction案件の場合
Construction |
|||
プロジェクト規模 | SG$10M未満 | SG$10M以上 | Civil Engineering |
SG$0.5M以下 | 0 | 0 | 0 |
最初のSG$1M | SG$0.1M毎に 1.325 man-years |
SG$0.1M毎に 1.223 man-years |
SG$0.1M毎に 0.543 man-years |
次のSG$9M | SG$1M毎に 7.950 man-years |
SG$1M毎に 7.338 man-years |
SG$1M毎に 3.261 man-years |
次のSG$20M | – | SG$1M毎に 4.892 man-years |
SG$1M毎に 2.014 man-years |
次のSG$70M | – | SG$1M毎に 3.261 man-years |
【SG$30M以上】 SG$1M毎に 1.082 man-years |
次のSG$100M | – | SG$1M毎に 2.446 man-years |
Process案件の場合
Process |
|||
プロジェクト規模 | SG$10M未満 | SG$10M以上 | Civil Engineering |
SG$0.5M以下 | 0 | 0 | 0 |
最初のSG$1M | SG$0.1M毎に 1.650 man-years |
SG$0.1M毎に 1.523 man-years |
SG$0.1M毎に 0.677 man-years |
次のSG$9M | SG$1M毎に 9.903 man-years |
SG$1M毎に 9.141 man-years |
SG$1M毎に 4.062 man-years |
次のSG$20M | – | SG$1M毎に 6.094 man-years |
SG$1M毎に 2.708 man-years |
次のSG$70M | – | SG$1M毎に 4.062 man-years |
SG$1M毎に 1.354 man-years |
次のSG$100M | – | SG$1M毎に 3.047 man-years |
ケースバイケース |
外国人採用枠を譲渡できる?
MYEで最も特徴的なのは、
獲得した外国人採用枠をメインコンからサブコンへ譲渡できることです。
MYE取得の申請ができるのはメインコンのみなので、サブコンはメインコンからもらうしかないのです。
建設業界では多くの場合、メインコンが受注した後の具体的な作業は、
サブコン(下請け業者)が担当することになります。
オフィスビルプロジェクトを例にとると、
オフィスビルを建てるというと、シンプルに聞こえますが、
非常に多くの作業が必要となり、実は様々な役割に分かれています。
建物の建設は勿論、デザイン・設計、電気・機械(M&Eといわれる)、下水などの配管、空調、スプリンクラーなどの火災消火設備、ネット回線などなど、とてもメインコンだけで手に負えません。
そこで、丸っと全てまたは個別の作業ごとに、メインコンはサブコンへ外注するのです。
なので、メインコンが外国人採用枠をもらっても、実際の作業はサブコンがするので、
外国人の採用枠を譲れないと実務上不便なわけです。
MYEの有効期限
当たり前ですが、プロジェクトが完了するまでです。
プロジェクト遂行のための採用枠なのに途中で終わったら意味ないですよね。
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