シンガポールM&Aを行うにあたり、
必ず避けては通れない「Quota(クオータ)」について本記事で徹底解説します。
本記事は、
下記の疑問を持つM&A担当者の方、シンガポールでM&Aを検討されている方が対象です。
・Quota(クオータ)って聞いたことあるけどよくわからん
・Quota(クオータ)は知ってるけどシンガポールM&Aとどう関係があるの?
シンガポールのM&Aを検討する担当者なら必ず知っておくべき内容になりますので、
【シンガポールM&Aの教科書】これを読めばシンガポール会社法・クロージング手続きが分かる!と併せて一読されることをおすすめします!
「Quota(クオータ)」とは?
「外国人従業員の採用可能枠」のことです。
企業が「シンガポール人」ではなく、「外国人従業員」を雇う場合、
シンガポールでは、企業ごとに「外国人を何人まで雇ってよいか」が決められています。
なぜ政府がそんなルールを決めているかというと、
「シンガポール国民の職」を守るためです。
外資ウェルカムなシンガポールでも、「外国人ばかり雇う企業は許さん」
ということなんでしょう。
次は、「じゃあ何人まで雇っていいのか」について算出方法含め解説します。
Quota(クオータ)の算出方法とは?
Quota(クオータ):外国人採用可能枠の計算式は下記の通りになります。
【Quota(クオータ):外国人採用可能枠の計算式】
外国人採用可能枠 = 業種係数 × ローカル従業員数(フルタイム勤務)
※業種によって乗じる倍率(業種係数)が異なります
※就労パスの種類ごとにも割合制限があります
業種係数とは?
「業種係数」は、MOM(シンガポール労働省)が業種毎に定めております。
① Services(サービス業):2/3倍
② Manufacturing(製造業):1.5倍
③ Construction(建設業):7倍
④ Process(加工業):7倍
⑤ Marine shipyard(貿易業):7倍
業種については、MOMへ事業内容を申告した際、
MOMとのやり取りの中で、MOMから適切な業種が割り当てられるため、
第三者が確認することはできません。
対象会社は間違いなく「自社の業種は何か」なんてわかっていると思いますので、
マネジメントインタビューの際や、デューデリ(DD)の際に
直接オーナーに確認したほうがよいでしょう。
(自社の業種を確認する際は、「CorpPass」へログインすることで確認できます)
CorpPass(コープパス)とは?
法人手続きを行うオンラインサイトのことです。
シンガポールでは、税務申告やビザの申請等の法人手続きを全てオンラインで行うため、会社毎にCorpPass IDが与えられ、そのオンラインサイトを通じて、企業と政府間のやり取りを行います。
外国人の定義
「外国人採用枠」といっても、ちゃんと定義があります。
Quota(クオータ)を算出する際の「外国人」は、下記の人たちのことです。
【Quota(クオータ)の対象となる外国人労働者の定義】
①低技能の外国人労働者:Work Permit Holder
– メイド等の単純作業労働者用の就労ビザのこと
– 国籍制限あり(マレーシア、中国、香港、マカオ、韓国、台湾の人のみ取得可能)
– PRC:中華人民共和国、NAS:香港、マカオ、韓国、台湾を指す
②中技能の外国人労働者:S Pass holders
– 「エスパス:SP」と呼ばれる就労ビザのこと
– 国籍に制限はなく、日本人がシンガポールで働く場合にも取得
ローカル従業員(フルタイム)の定義
定義ばかりで難しく感じるかもしれませんが、
Quota(クオータ)を理解する上で、「言葉の定義」はとても重要です。
Quota(クオータ)の算出式内にあった
「ローカル従業員(フルタイム)」の定義は下記の通りです。
【ローカル従業員(ローカルFTE)の定義】
・月額給与がSGD1,300 以上のシンガポール人及び永住権保有者(PR)
・月額給与がSGD650 以上SGD1,300 未満のシンガポール人及びPR については、パートタイム勤務のローカル従業員とされ、2 名のパートタイム勤務のローカル従業員が1 名のローカルFTE としてカウントされる
つまり、いくらフルタイムのローカル従業員といっても、
給料が低いと1/2としてカウントされるということですね。
就労パス毎の制限
外国人労働者全体の人数制限に加え、就労パスの種類ごとにも制限があります。
例えば、Quotaの計算上、「外国人労働者100人雇える!」となった場合でも、
「全員S Passにするぞ!」ということは無理で、「S passは20人まで」等のように
制限が設けられています。
例を見ていきましょう。
建設業界の場合、
「S Passの外国人労働者は、全体の20%まで」
等のように制限があります。
また、サービス業界の場合はもう少し細かく制限が設定されており、
「S Passの外国人労働者は、全体の15%まで」
かつ
「Working Permitの中国人労働者は、全体の8%まで」
と定められています。
以上のように、考え方は理解できたけど、変数が多くて自分で計算できない!
という人向けに自動計算サイトをご紹介します。
初めから紹介してくれという声が聞こえてきそうですが。
Quota(クオータ)自動計算サイト
上では、Quota(クオータ)の計算方法や言葉の定義について説明してきましたが、
計算自体は、MOM(シンガポールの労働省)のサイトにて一瞬で計算ができます。
手順は以下の通りです。
【Quota(クオータ)計算手順】
①MOMのサイトにアクセス(サイトはこちら)
②業種を選択
③ローカル従業員数を入力
④外国人労働者の内、S Passを持った人の人数を入力
⑤外国人労働者の内、Working Permitを持った人の人数を入力
※サービス業や製造業の場合、国ごとにも制限があるため、国ごとの入力が求められます。
なお、実際にMOM が外国人従業員の雇用可能人数の上限を計算する際には、
ローカルFTE の人数については、中央積立基金(CPF)のアカウントをベースに計算するようです。
【サイト画像例①:業種選択】
【サイト画像例②:現在の従業員数の内訳を入力】
Quota(クオータ)上限を超えたらどうなるの?
上記の上限を超えた場合、下記のリスクがあります。
- 新たなS Pass やWork Permit の申請の拒絶
- 継続的に上限を超えている場合には、
既に発行されている超過分のS Pass または Work Permit の取消
以上より、外国人従業員の雇用可能人数の上限は常に確認しておく必要があります。
外国人労働者規制は頻繁に改正がされている分野であり当局の裁量も大きいので、
上記の情報及び計算は、今後の規制や当局の運用・方針の変更によって変わってきますので、常に最新情報をご確認いただければとおもいます。
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