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【実務が分かる!】スタートアップ/ベンチャーM&A投資契約書(実際の案件で使用したもの)

実際の契約書(実際の案件で使用したもの)

日本企業が米国のベンチャー企業へ投資する案件で使用した投資契約書の概要です。
既にSeries AA株主がいる中で、Series AラウンドでUS$5M投資するという案件でした。

投資契約といっても、本件のように多くの契約書に分かれているものもありますが、
項目としては同じであり、一つになっているか、分かれているかの違いだけです。

Amended and Restated Certificate of Incorporation(定款)

  • Liquidation preference(残余財産優先分配権)
    • Series A株主はSeries AA株主、普通株主よりも優先して、Series Aの投資元本及び未払配当金の合計額を受け取ることが可能
    • 清算時にX社の残余財産が上記の合計額に満たない場合には、全ての残余財産がSeries A株主に対して分配される
    • Series A株主への分配後、残った金額についてはSeries AA株主及び普通株主へ持分比率(完全希薄化後ベース)に応じて分配する
    • ただし、優先株主としての元本回収($5M)を行うか、普通株主として持分比率(完全希薄化後ベース)にて分配を受けるかについては選択可能($5M or 残余財産×11.1%)
  • Deemed Liquidation(みなし清算)
    • 第三者による買収等を「清算」とみなし、X社の財産分配を行う
  • Qualified Financing(適格資金調達)
    • $3Mを超える優先株式による資金調達を「適格資金調達」として定義
  • Qualified IPO(適格IPO)
    • $30Mを超える調達額のIPOを「適格IPO」として定義
  • Automatic Conversion(強制転換)
    • 適格IPOの場合 or Series A株主の同意があった場合、Series A株式は1:1で普通株式に強制転換される(優先株主としての権利は消滅)
  • Conversion Price Adjustment(転換価格の調節)
    • Series Aの転換価格(株価)よりも低い価格でX社が新株発行する場合(ダウンラウンド)、Series Aの転換価格(株価)を修正することで持ち株数を増加させ、希薄化の影響を最小限に抑えることが可能
    • 修正後転換価格は加重平均方式で算出
  • Protective Provisions(拒否権)
    • Series A株主の過半数の同意がなければ実行できない事項は下記の通り
      1. Series A取締役を含む取締役会の承認なしに、清算(解散、合併、統合等も含む)を行うこと
      2. Series AA株主、Series A株主の権利の不利益変更を行うこと
      3. Series A取締役を含む取締役会の承認なしに、配当を行うこと
      4. Series A取締役を含む取締役会の承認なしに、合計$1Mを超える借入を行うこと
      5. 取締役の人数変更を行うこと(適格資金調達による変更は除く)
      6. Series A取締役を含む取締役会の承認なしに、オプションプール(ストックオプションの発行枠)を増加させること
      7. Series A株主に不利な影響を与える定款変更を行うこと
      8. Series AA株式、Series A株式、普通株式、あるいはそれ以外の株式を増加あるいは減少させること(適格資金調達による変化は除く)
      9. 発行済みの優先株式よりも優位な優先株式を発行すること(適格資金調達による発行は除く)
      10. Series Aと同等又は下位の発行済株式における優先権をSeries Aよりも有利にすること(適格資金調達による変更は除く)
      11. Series A取締役を含む取締役会の承認なしに、X社の知的財産の独占的ライセンスまたは知的財産に関わる独占契約の締結
      12. Series A取締役を含む取締役会の承認なしに、会社の資産に対する抵当権等の制限を加えること
      13. Series A取締役を含む取締役会の承認なしに、他社の資産及び株式の取得や投資を行うこと(ただし、合計$1M以上)
      14. Series A取締役を含む取締役会の承認なしに、重大な訴訟を開始又は解決すること
      15. Series A取締役を含む取締役会の承認なしに、X社のメインビジネスに変更を加えること

Series A Preferred Stock Purchase Agreement(シリーズA投資契約)

  • Representation & Warranties of the Company(X社の表明保証)
    • X社が最終契約のクロー ジング時点において、財務や法務等に関する一定の事項が真実かつ正確であることを表明し、その内容を保証するもの
  • Condition of Obligation at Closing(クロージング条件)
    • クロージングを行うための前提条件を規定している条項
    • 例としては、表明保証の内容が真実かつ正確であることやその他の付随契約が締結されている事等
    • クロージング条件が全て満たされない限り、クロージングできない(ただし、貴社が放棄した場合を除く)

Voting Agreement(議決権拘束契約)

  • Board Composition(取締役会の構成)
    •  取締役は以下の3名とする
      • Series A取締役(貴社による選任が可能)
      • 現オーナー
      • 上記の二人の取締役が承認した者
  • Drag Along Rights(強制売却権)
    • 過半数保有株主(完全希薄化後ベース)による保有株式全ての売却 or みなし清算が生じた場合(取締役会で承認された場合)、全株主は株式売却に応じなければならない

Right of First Refusal and Co-Sale Agreement(先買権・共同売却権に関する契約)

  • Rights of First Refusal(先買権)
    • 創業者が保有持分を第三者に売却する場合、まずX社、次にSeries A株主が、第三者への売却前に優先して、売却予定の株式を同条件で買い取ることができる権利
    •  契約違反の場合、コールオプションにて手当済
  •  Co-Sale(共同売却権)
    • Series A株主が売却できる株数は、創業者による売却予定株式数×(Series A株主の保有株式数/(創業者の保有株式数+Series A株主の保有株式数))にて算出
    • 契約違反の場合、プットオプションにて手当済
    • 上記の先買権を行使しなかった場合、Series A株主はその売却に参加することが可能

Amended and Restated Investor’s Rights Agreement(投資家の権利に関する契約)

  • Registration Rights(登録請求権)
    • 米国では株式の売り出しに際し、SEC(証券取引委員会)への登録が必要
    • Series Aの保有株式を登録するようX社へ要求することが可能
  • S-3 Registration
    • 簡便な登録であるForm S-3の登録をX社へ要求すること可能
  •  Lock-Up(ロックアップ)
    • IPO後に現在の株主が大量の持ち分を売却することによる株価暴落を防ぐことが目的
    •  IPO後の180日間(FINRAの規定に従って最大216日間加算)、既存株主による市場での株式売却を禁止
  •  Covenants(コベナンツ)
    •  X社から投資家への財務諸表の提供、投資家のX社内の視察の許可、投資家に対する先買権の承認、投資家の秘密保持等を規定

Side Letter(SPAのサイドレター)

    • Rights of First Notice(優先交渉権)
      クロージング日から2年間の間にX社が第三者から買収提案を受けた場合、投資家はその事実を知らされた後、買収につき45日間の交渉期間が与えられる

想定シナリオ及び関連するタームシート上の権利 

本件投資後、将来X社の企業価値が下落した場合に担保されるタームシート上の権利を纏めたものになります。

シナリオ タームシート項目
①他社によるX社買収 First Refusal

優先交渉権 / 先買権

•X社株主が第三者へ保有株式を売却しようとする場合、その売却予定株式を購入できる権利

•ただし、優先順位は、X社(自社株買い)>貴社(Series A株主)

Liquidation

清算時の残余財産分配の優先権

•他社によるX社買収は、タームシート上の”Exit”に該当するため、貴社(SeriesA株主)が他の株主に優先して、(1) Series Aの元本(本件投資額)、 (2) 未払配当金(配当可能額がある場合) の合計額を受け取る権利。即ち、今回のラウンドより低い買収価格となっても、$5M以上の買収である限り、投資元本の回収は可能
②既存株主による持分売却 Co-sale

共同売却権

•X社株主が保有株式を売却する際、それと同条件で、プロラタペースで貴社持分の売却を行うことができる権利
First Refusal

優先交渉権 / 先買権

•X社株主が第三者へ保有株式を売却しようとする場合、その売却予定株式を購入できる権利

•ただし、優先順位は、X社(自社株買い)>貴社(Series A株主)

③Down-roundでの将来資金調達 Conversion Price Adjustment

希釈化防止条項

•X社がSeries Aより低い単価で株式の新規発行を行う場合、Series Aの単価と新規発行時(Down-round)の単価の加重平均単価を、Series Aの単価と置き換えることで、Series Aで取得した株式数(完全希薄化後ベース)が増加
Preemptive Rights

新株優先引受権

•X社が発行する新株を、完全希薄化後の持分比率に応じて優先して引き受けることができる権利

•この権利を行使することで、株式の新規発行による持分の希薄化を防止できる



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