M&Aマニュアル

シンガポールの設備工事業界における業界動向!M&Aの注意点や国内M&Aとの違いは?

1. シンガポールの設備工事業界動向

シンガポールの設備工事業界動向をみると、外国企業によるM&Aを始め、外国企業がシンガポール国内に現地法人を設立するなど、外貨の流入が増えている傾向があります。

シンガポール経済開発庁(EDB)が2017年に発表した設備工事業界動向によると、投資額全体の中で中国企業が占める割合が急激に増えていることが分かっています。

シンガポール国内における設備工事業界への投資額は約7800億円程度で、この金額は大きく増えているというわけではありません。

しかし投資額の内訳は近年で大きな違いがあり、外国企業からのM&Aもその違いに大きく関係していると考えることができます。

シンガポールの設備工事業界動向の中でも投資額が増えているのは、クリーンエネルギー分野やデジタルハブ分野となっています。

これは、シンガポール国内でも太陽光発電のようなクリーンエネルギーに大きな関心が寄せられていたり、AIやIoTを駆使したテクノロジー設備の導入が注目されていることでしょう。

2. 業界成長性

シンガポールにおける設備工事業界動向をみると、国内での設備工事業界への投資額という点では近年の推移を見ても大きな違いはありません。

しかし、中国企業をはじめとする外国企業がシンガポールに進出したことによって、設備工事業界に占める外貨の割合が高くなっているという特徴があります。

シンガポールは一定の金融システムやインフラが整備されている国で、日系企業にとっても進出先としては大きな魅力があります。

そのため、今後も海外からの企業進出は右肩上がりに増えることが予想されていて、
それに伴う設備工事業界のニーズも高まると考えられています。

こうした背景や業界動向を考慮すると、今後のシンガポールにおける業界成長性はかなりプラスの成長が見込めるのではないでしょうか。

3. 日系企業によるシンガポール設備工事業界企業買収事例

シンガポールにおける設備工事業界への進出やM&Aは、日系企業も積極的に行われているという業界動向があります。

いくつか事例をご紹介しましょう。

1つ目の事例は、2018年に締結された大成温調によるISOインテグレートM&E社のM&A買収があります。

ISOインテグレートM&E社はシンガポール国内を拠点とする電気設備工事会社で、主に公共施設や商業施設の電気設備工事を請け負っています。

このM&Aによって大成温調はISOインテグレードM&E社の発行済株式34.1%を取得しました。

大成温調にとっては、シンガポール国内における建築機械設備工事部門を立ち上げる基盤づくりを目指すとともに、すでに確立されているISOインテグレートM&E社のネットワークを生かして、東南アジア全体への市場拡大を探ることができるようになりました。

2つ目の事例は、2019年に行われた協和エクシオによるWinner Engineering Pte.LtdのM&A買収です。

Winner Engineering Pte. Ltd.社はシンガポールを拠点として活動する設備工事会社で、主に空調設備や暖房設備、そして換気設備をメインに業務を行っています。

新築ビルを始め既存ビルを対象としてACMVを設置するほか、製造や保守においてもサービス範囲を拡張しているため、このM&Aによって協和エクシオはWinner Engineering Pte.Ltd.が持つ技術やノウハウ、ネットワークをそのまま引き継ぐことができる他、グローバルな情報通信インフラ構築の基盤づくりに乗り出すことができます。

3つ目の事例は、ビケンテクノがシンガポールに設立した現地法人を通して行ったLeong Hum Engineering Pte.Ltd.のM&A買収です。

シンガポール現地法人のシンガポール・ビケンPte.Ltd.社は、主に設備工事業界のマネジメント業務を展開していて、Leong Hum Engineering Pte.Ltd.社を買収したことによって、同社が展開していたエアコン設置工事及び付随する事業をそのまま引き継ぐことが可能となります。

シンガポール国内における業務拡大や市場の拡大が期待できるM&A事例と言えるでしょう。

4. シンガポールは公共工事が多い

シンガポールでは、都市部におけるインフラは比較的整備されていて安定していますが、周辺地域においてはまだまだこれからという地域がたくさんあります。

そうした地域のインフラ整備においては公共工事が多いため、シンガポールを拠点としていない日系企業にとっては不利となってしまいます。

M&Aによってシンガポールの現地法人を設立したり、M&Aによって既に実績のある現地企業を買収すれば、シンガポール国内における公共工事の分野においても深く切り込むことができるようになります。

特にシンガポールの設備工事業界では、企業が国に登録する際には、過去の実績などを含めて格付けされるシステムとなっていて、ランクによって工事を受注できる可能性に大きな違いが出るという業界動向があります。

多くの場合にはゼネコン業者が受注をした上で、設備工事の分野を専門の業者にサブコンするという形態となるため、シンガポール企業をM&Aで買収することは、その企業がすでに持っているネットワークを活用できるという点でも、日本企業にとっては大きな魅力があります。

5.エネルギー分野における設備工事が急増

シンガポールでは、日本と同じようにエネルギー問題や地球温暖化問題に対する対策やインフラ整備に対する高いニーズがあります。

そのため、設備工事業界動向においても、自然エネルギーを用いた設備工事の発注件数は増えています。

エネルギー分野においては新しい技術が開発されることによってニーズが発生するため、長期的に見ても需要が低くなるリスクは比較的低い分野と言えるのではないでしょうか。

6. シンガポールにおける工事発注の形式

日本の設備工事業界においては、シンガポール工事発注形式という言葉があります。これは、工事を計画した施設所有者が、建築家やM&Eコンサル、構造設計し、積算査定士と直接契約を行い、プロジェクトの入札が終了したら工事の内容を分離発注するという形式のことです。

シンガポールにおいては、イギリスによる統治が長かったという歴史があり、この工事発注形式もイギリススタイルで、現在でもシンガポールの設備工事業界においては一般的に行われています。

シンガポール工事発注形式の特徴は、一つのゼネコンにすべての工事を依頼してゼネコン側がサブコン契約をするという形式ではなく、施設の所有者が部分的に分離発注できるため、競争入札のシステムが徹底されているという点があります。

ただし、シンガポールの工事においては所有者があらかじめ業者を指定する指名入札や限定入札という形式もあるため、必ずしもすべての工事が完全な一般入札形式で行われるというわけではありません。

7.設備工事業界における外貨規制

シンガポールでは、一部の業界を除いては外貨の規制は行われていません。

規制が行われている業界についても、法律によって一括規制が行われているというわけではなく、ケースバイケースでの対応が多くなりますし、外貨規制を取り締まる官公庁などはありません。

外貨規制は、シンガポール国民の労働機会や企業を守るために制定されているもので、一般的には公共事業やメディア関連の分野が対象となることが多いようです。

設備工事業界でも、公共事業のサブコンとしてかかわることが多いため、もしもシンガポール現地法人による進出を考えている企業は、その点は注意したほうが良いでしょう。

M&Aの場合には、すでにシンガポール資本の企業を買収するので、外貨規制の影響は受けにくいと考えられます。

8. シンガポールにおける現地法人の形態とは

シンガポールへ進出する方法はいくつかあります。

すでにシンガポール国内で事業を展開している企業をM&Aによって買収するという方法もあれば、日系企業がシンガポールに現地法人を設置するという方法も珍しくありません。

現地法人は日本企業の子会社という位置づけとなり、有限責任株式会社となると考えることができますが、日本と比べて有限責任株式会社だけではなく、無限責任会社や有限責任保証会社などの形態で設立が可能でという違いがあります。

ちなみに、シンガポールにおける有限責任株式会社には公開会社と非公開会社の2種類があります。

公開会社は株主数が50人以下で、株主の譲渡制限が会社定款に含まれていない会社のことを言います。

現地法人の設立に当たっては、株主が1人以上必要になる他、シンガポールに居住する人が1人以上必要となります。

そのため、現地法人の設立においては、シンガポールのそうした法律に詳しい専門家や専門のサービス業者を利用するのがおすすめです。

9. シンガポールM&Aでは全額出資はOK

海外M&Aにおいては、海外資本がどこまで流入できるのかという点で国ごとに違いがあります。

シンガポールにおいては、国家の安全にかかわるような特定の分野や業種を除いては、基本的には100%外貨資本による出資が認められています。

そのため、M&Aで現地企業を買収する際にも、100%の株式を取得して完全子会社にすることができます。

10. シンガポールの労働力についても知識が必要

シンガポールM&Aで現地企業を買収する際には、日本とシンガポールにおける労働力の違いについても理解しておいた方が良いでしょう。

シンガポールの失業率は、毎年若干の違いはありますが、大体2%~3%の間となっていて、それほど高くはありません。

労働時間についても日本とは異なります。

日本の場合には労働基準法によって週当たりの労働時間は40時間までと規定されていますが、シンガポールでは週に44時間までの労働が認められていて、土日がお休みの企業なら1日8時間ではなく9時間までの労働が可能です。

ただし、連続6時間を超える労働はNGなので、休憩時間をきちんと確保した労働スケジュールが必要です。

11. 駐在員の住居はコンドミニアムが主流

シンガポール企業をM&Aで買収した場合、現地企業が持っている知的財産や労働力などもそのまま引き継ぐことが可能です。

その場合でも、日本の本社から現地企業へ駐在員を派遣するのが一般的なため、駐在員が現地でどんな場所に住めばよいのか、また食事や治安についても企業としては心配なところではないでしょうか。

現在、シンガポールにはたくさんの駐在員が生活をしています。

その多くは設備が完備されたコンドミニアムに住んでいて、場合によっては掃除やランドリーサービスが付いたコンドミニアムもあります。

シンガポールにはたくさんのコンドミニアムがあり、閑静な住宅街や交通の便が良い場所、そしてレストランなどの繁華街の中にも見つけることができます。

駐在員のニーズに合わせた住まい選びができるという点では、シンガポールは駐在員を派遣しやすい環境にある国と言えます。

12. シンガポールM&Aは税制面でも節税が可能

長期的にニーズが下がるリスクが少ない設備工事業界においては、M&Aなどでシンガポールへ進出し、そこから東南アジアへの市場拡大を狙う業界動向があります。

日本と比べると、シンガポールという国は法人税は表面税率が17%と低く、日本企業にとっては節税効果が期待できます。

ちなみに個人所得は2%~22%の累進課税となっていて、こちらも駐在員にとっては節税効果が期待できるでしょう。

13. 日本企業のM&Aが増えている

現在、シンガポールにおける海外企業の進出やM&Aという点では、中国企業の方が日本企業よりも積極的かつ大きなシェアを持っています。しかし設備工事業界だけに限らず全般的にみると、日本企業のシンガポールM&Aは確実に増えています。特にインフラ整備や建設業界、そして設備工事業界においては日本企業がシンガポールの公共事業を受注するケースも多く、今後はそうした工事に伴って、金融業界や通信業界のM&Aもますます活発になると考えられています。

14. シンガポールがM&Aで人気の理由

東南アジアは全般的に経済成長の点では高いポテンシャルを持っています。

その中でもシンガポールは日系企業に人気が高い国ですが、その理由としてはインフラや金融システムが一定レベルで整備されていて、しかも安定しているという点が挙げられます。

多民族国家で言語も複数言語を話すという日本との違いはありますが、日本企業にとってはビジネス展開しやすい国と言えます。

15.シンガポールの設備工事業界M&Aは今後も右肩上がり

シンガポールの設備工事業界では、外貨の流入が全体の投資額に占める割合を増やしています。

今後は日本企業のM&A買収も増えることが見込まれています。

シンガポールと日本とでは法的な部分や労働力の面で違いがあるので、M&Aを検討する際には必ず専門的な知識を持つ専門家に仲介に入ってもらうことをおすすめします。

 

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