1. シンガポールのファシリティマネジメント業界動向
道路や鉄道、建物や住宅のインフラが忙しく整備されているシンガポールでは、ファシリティマネジメント業界の業界動向をみると、まだ大きな成長がスタートしていない段階にあると考えることができます。
現在でもファシリティマネジメント業界は都市部を中心に高いニーズがありますが、今後インフラが整備されて、ビルなどの建物が国内全域に建設されると、ファシリティマネジメント業界のニーズはシンガポール国内全域に広がることになります。
そう考えると、シンガポールにおいてファシリティマネジメント業界のM&Aを検討することは、将来の成長を見据えた大きなビジネスチャンスと言えます。
ファシリティマネジメント業界では、労働力という点でも多種多様な技術やスキルが必要となるため、そうした多様性も上向きの業界動向に貢献していると考えられます。
例えば、建物を持っている企業に対して営業をかける人材が必要ですし、空調や管理システムなどの設計や設置、保守を行うエンジニアなども必要です。
さらに、AIやIoTなど最先端の技術を駆使してシステム開発を行うエンジニアやプログラマーなども必要となります。
シンガポールのファシリティマネジメント業界を活性化させることは、国内に多くの優秀な人材を呼び込むことにもつながります。
業界動向が上向きというのも納得できるのではないでしょうか。
2. 業界成長性
ファシリティマネジメント業界は、シンガポールだけでなく日本国内においても高いニーズがある業界です。
業界動向をみると、近年では再生可能なエネルギー(RE100)への取り組みが活発に行われている他、AIやIoT、また顔認証システムが多くの建物に導入されています。
そうした技術を支えるのはファシリティマネジメント業界なので、技術の発達に伴ってニーズが低下することがない成長が期待できます。
さらに、日本をはじめとする世界各国では、働く場所であるオフィスの変革が大きなテーマになっていて、オフィスが果たす生産性の向上や役割が注目されています。
創造性と生産性が高いオフィス作りにはファシリティマネジメント業界の尽力が必要不可欠となるわけで、その点からもこの業界は今後の業界動向が明るいと言えます。
3. 日系企業によるシンガポールファシリティマネジメント業界企業買収事例
ファシリティマネジメント業界のシンガポールM&Aと言えば、よく知られているのが2019年に行われた大成のC+H Associates Pte Ltd.の買収ではないでしょうか。
C+H Associates Pte Ltd.はシンガポールのファシリティマネジメント業界企業で、大成の買収によって株式の75%を大成が取得することになりました。
このM&Aでは、大成が基盤とする不動産の管理やメンテナンス事業を東南アジア地域にも拡大することを目的としたものでした。
買収されるC+H Associates Pte Ltd.もシンガポール国内では設備管理や建築業務をメインに事業展開をしていて、過去には公的事業案件の実績もある信頼できる企業です。
日本国内においてマンションやオフィスビルの総合管理を基盤とする日本ハウズイングは、2016年にシンガポールのPropell Integrated Pte Ltd.をM&A買収し、シンガポールに進出をしました。
このM&Aにおいては、議決された株式所有割合は80%で、取引価格については非公開となっています。この80%の所得割合については、日本ハウズイング側ではM&A後3年かけて残りの20%についても追加取得を目指し、100%子会社にすることを目指しています。
このM&Aは、シンガポールでのM&Aを足掛かりとしたうえで今後はASEAN諸国への進出も視野にいれた企業買収でした。
ビケンテクノもまた、シンガポールでプールのメンテナンス業を展開しているAquatic Maintenance Service Pte.Ltd.をM&Aしました。
ビケンテクノでは以前からシンガポールに現地法人となるSingapore Biken Pte.Ltd.を展開していて、M&Aを行ったのはこのシンガポール現地法人ということになります。
ビケンが所有する株式は80%で、このM&Aによってビケンが現地のプールメンテナンス事業へと業務拡大することが目的だったようです。
4. ファシリティマネジメント業界は優良業界
シンガポールに限ったことではなく、グローバルな視野でみると、ファシリティマネジメント業界は他の業界と比べて優良な業界だと考えられるポイントがたくさんあります。
例えば、この業界では照明システムに最先端の技術が駆使されていたり、太陽光発電システムが導入される等、技術の発達によって直接的に影響をうけ、ニーズが常に右肩上がりとなる業界です。この点が他の業界と比較して大きな違いと言えます。
また、AIやIoTなど今後飛躍的な発展が期待されている技術とも、ファシリティマネジメント業界は大きな関係があります。既存のシステムを最先端技術を駆使したシステムに入れ替えるというニーズはシンガポールにももちろん多いため、ニーズが絶える心配がない業界なのです。この点では日本国内におけるニーズと大きな違いはありませんが、他の業界と比べて大きな違いとなります。
5. ファシリティマネジメント業界のM&Aの業界動向
ファシリティマネジメント業界動向の中でもM&Aという点に焦点を当てると、国内企業同士のM&Aよりも、海外M&Aが注目されているという業界動向があります。
ファシリティマネジメント業界のM&Aは大きく分類すると、海外進出型と大手集約型とに分けることができますが、海外進出型では日本企業が持つ高い技術力を武器にしたM&Aが可能ですし、M&Aでなくても現地法人を設立したり現地の企業と業務提携という形で進出ができるため、将来のM&Aの足掛かりにしたいという企業は多いでしょう。
6. ファシリティマネジメント業界が持つ問題点
ファシリティマネジメント業界が抱える問題点には、低い賃金で優秀な人材を確保しにくいという現状と、人手不足があります。
これはシンガポールだけに限ったことではなく、日本国内のファシリティマネジメント業界にも共通する問題点ですし、世界各国でも同じ問題点を抱える国は少なくありません。
ファシリティマネジメント業界と言っても多種多様な技術やスキルが必要となりますが、労働集約型産業のために非正規雇用者の割合が高く、労働者の半数以上は非正規雇用労働者とも言われています。
特に保守や管理の部門については、大手企業が下請け企業に委託するケースが多く、どうしても下請け事業の労働が人材不足となりやすいようです。
そして、労働賃金が低いと優秀な人材を確保できないというマイナスの連鎖に陥りやすいという点が、エリアや国による違いがないファシリティマネジメント業界に共通する問題点となっています。
7. そもそもファシリティマネジメントはどうして必要なのか?
他の業界とは違い、どの時代にもニーズが途切れる心配がないと言われているファシリティマネジメント業界ですが、そもそもこの業界はどうして高いニーズを維持できるのでしょうか?
ファシリティマネジメント業界では、建物や施設を提供したり維持することを基盤とした業務を行います。
そうした建物が施設の中には他の業界の企業がオフィスを構え、そこで経済活動を展開し、利益を出します。
それらの企業にとっては、オフィスの保守や管理は資産を守るためには重要なので、できるだけ社員が快適に働ける環境づくりに尽力しますし、セキュリティの面でも投資をするわけです。
そこで必要となるのが、オフィスという建物や施設を管理保守するファシリティマネジメント業界です。
こうした管理や保守の業務には、最先端の技術が駆使されることが少なくありませんし、常に新しい技術と共に新しいニーズが誕生するため、業界動向が明るい業界と言えるのです。
8. 企業ごとにアプローチが異なる
ファシリティマネジメント業界では、世界各国に多種多様な企業があります。
大手の企業から中小規模の企業まであり、それぞれがファシリティマネジメントという大きな枠組みの中で、どの部分をメインに展開するかが異なります。
大手の企業でも、配管やエアコン管理を強みとする企業もあれば、給食や清掃のサービスをメインに扱う企業があったり、防火システムや施設のメンテナンスに対応する企業など、企業ごとに特徴や特色が違います。
9.世界のファシリティマネジメント業界シェア
ファシリティマネジメント業界における世界市場でナンバーワンのシェアを誇るのは、イギリスを拠点にグローバルな展開をしているコンバスグループです。
このグループは、給食事業やケータリングを始め、フード系のサービスやコントラクトが強く、世界中でサービスを展開しています。
2番目に大きなシェアを持つのは、フランスのソデクソ社です。
こちらも社員食堂の受託などフード系サービスに強く、フランスに本社を置きながらグローバルな展開をしています。
3番目に大きなシェアを持つのはアメリカのアラマークで、施設やオフィスビル向けのケータリングサービスを始め、ユニフォームや作業着のクリーニングやレンタルサービスを手掛けています。
10. ファシリティマネジメント業界の70%はソフトサービス
シンガポールを始め多くの国では、それぞれたくさんのファシリティマネジメント業界に属する企業があります。
企業ごとにどんなサービスを提供するかという違いはありますが、業界動向をみると、全体の約70%程度の企業は、給食や清掃のようなソフトサービスと呼ばれる分野をメインにしていると言われています。
ちなみに、給食や配食は市場規模としては約1000ドルと言われているため、シンガポールでも高いニーズが期待できるエリアではないでしょうか。
11.シンガポール企業は多民族・多言語
日本国内にある企業なら、そこで働く労働者はかなり高い確率で日本人ですし、話す言語もほぼ日本語のみで対応することができます。
しかし、シンガポールは中国系をはじめとしてマレー系やインド系など多民族で形成されている国で、その点は日本国内の企業と大きく違います。
シンガポール企業とのM&Aを検討する際には、この国が多民族国家であり、国民の多くは共通語となっている英語に加え、自分の民族の言語を話すという点、そしてそれぞれの文化が異なるという点についても、日本との違いを理解した上でビジネス戦略をするのが望ましいでしょう。
12.シンガポールの勤務時間は長め
日本では近年、社員の残業を減らすための対策や、働き方改革を進める方向でそれぞれの企業が積極的に対策を講じています。
シンガポールの場合には、勤務時間は日本と比べるとやや長い傾向にあるので、その違いについても理解しておきたいものです。
シンガポールにも労働基準法のような法律はあり、労働時間の基準は1日8時間となっています。
しかし土日が休みで週5日勤務の企業では、1日の労働時間を9時間にすることが認められているため、実際の労働時間が9時間となっている企業がたくさんあります。
シンガポール企業とのM&Aにおいては、そうした労働者の働き方についても違いを理解しておきましょう。
13.時間には厳しい文化
シンガポールの人達は、「時は金なり」の傾向が強いという特徴があります。
大きな金額の商談においても、決断するスピードはとても早く、会社に持ち帰らずに即決するということも少なくありません。
また、待ち合わせの時間に関しても厳しいという特徴があります。
日本企業でも時間に関しては厳しい風習にありますから、この辺りに関しては大きな違いはないかもしれません。
14.シンガポールのポテンシャルは2590億ドル
ファシリティマネジメント業界は、アジア地域では高い市場ポテンシャルがあると言われています。
その中でもシンガポールのポテンシャルは高く、今後ファシリティマネジメント業界の成長は2590億ドル程度にまで伸びることが予想されています。
欧米のファシリティマネジメント業界では、ヒトと仕事、そして施設を総合的に調整しながら、それぞれが独立したビジネス戦略を選択しますが、日本ではサイクル式のマネジメントが選択されていて、ヒトと仕事、施設がお互いに評価しながら改善するポイントを見つけるという方法が適用されています。
シンガポールはファシリティマネジメント業界においてはポテンシャルが高い市場です。
今後、欧米の戦略方法と日本スタイルがコラボすることによって、新しい戦略方法や運営方法が誕生することも期待されています。
15. ファシリティマネジメント業界の国際基準(ISO FM)
グローバル化が進む中で、ファシリティマネジメント業界においては世界的な国際基準(ISO FM)の整備が進められています。
すでにガイドラインは公表されていますが、国や地域ごとにプロセスを調整する必要があり、今後はシンガポールにおいても、国際基準に合わせてどのような経営展開が行われるのかという点が注目されています。
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